ファースト・マン  B

(FIRST MAN)2018

監督  
デイミアン・チャゼル  
キャスト  
ライアン・ゴズリング ニール・アームストロング 
クレア・フォイ ジャネット・アームストロング
ジェイソン・クラーク エド・ホワイト(アポロ1号)
カイル・チャンドラー ディーク・スレイトン(NASAマネージャー))
コリー・ストール バズ・オルドリン(アポロ11号 セカンド・マン)
ルーカス・ハース

マイケル・コリンズ(アポロ11号降りない男)

オリヴィア・ハミルトン パット(エドの妻)
クリストファー・アボット デイヴ(ニールとともにジェミニ8号に搭乗)
キーラン・ハインズ ボブ(NASAディレクター) 
シェー・ウィガム ガス・グリソム(アポロ1号)
コーリー・マイケル・スミス ロジャー・チャフィー(アポロ1号)

1969年7月21日。

初めて月面に降り立った宇宙飛行士ニール・アームストロング

危険なミッションに挑み続けた男の人間性に焦点を当てたドラマ作

 

ソ連に先を行かれていた宇宙進出の分野で、アメリカが一気に巻き返して歴史的大成功を収めた!という恰好の題材でありながら、アームストロング船長やアポロ11号についての長編映画化はこれが初めてというので驚き。

 

(ヒューマンドラマ)

月面着陸という人類史上に残る偉業を成し遂げたアポロ11号のミッション成功までを描いた作品ですが「チームNASAが一丸となって困難なミッションに挑む」というサクセス&ヒーロー物語ではなく、一人の夫、一人の父親、一人の人間であるニールの内面に焦点を当てたドラマ作品に仕上がってます。

手持ちカメラでの撮影シーンが多く、ホームムービーを観ているような感覚もありました。

 

海軍パイロットから宇宙飛行士になったアームストロングは当然優秀なエリートで、危険な任務に挑み続けるだけの強い信念や情熱を持っていたと思いますが、本作で描かれているのは、寡黙なごく普通の家庭人

ギラギラとした情熱や野心は感じられません。

 

(死と宇宙)

本作のニールが宇宙を目指す理由やモチベーションの一つとなったのが周りの人間の死。特に幼い娘の死が大きく影響しています。

「なぜ娘が」

答えのない問いへの答えを求めた先が、母なる地球を飛びだした未知の世界だったのかもしれません。

 

(対照的)

●1995年の映画「アポロ13」と対照的な内容

「アポロ13」は1970年4月に月面着陸を目指して打ち上げられたアポロ13号が地球に帰還するまでを描いた作品。

本作とは対照的に、宇宙で起こる数々の危機を乗り越えるミッションを中心に描いた作品。

 

本作のアポロ11号は歴史的なミッションを成功させているのに、その辺りの描き方はかなりあっさり。

(むしろその前のトラブルや事故をたくさん描いてる)

 

一方、アポロ13号は月どころか地球に還る事さえ危機的な状況に陥るという大失敗ミッションだったのに、飛行士3人全員が帰還を果たしたことで、ミラクル・サクセスストーリーと化して、大逆転勝利のような感動を味わえるエンタメ作としても一級品に仕上がってます。

 

本作はちょっと玄人向けですね。

 

●これまでのチャゼル監督作とは対照的な”音”

チャゼル監督は2014年「セッション」、2016年「ラ・ラ・ランド」といういずれも音楽を題材にした作品で高い評価を受けてきました。

「ラ・ラ・ランド」に続いてライアン・ゴズリングを主演に置いた本作ではBGMを極力使わないようにしています。とっても静かな作品。

 

(よく行けたな、月)

本作では60~70年代のアメリカの宇宙計画がざっくりと描かれてます。

「死」や「死の危機」をテーマとしているため、アポロ11号が成功する以前の訓練やミッションについてはずーっとトラブルや失敗を描いてます。

その最たるものが1967年1月に起きたアポロ1号火災事故による飛行士3人の死亡。

ヤバイ事故を起こして犠牲を払いながらも止まる事なく超ハイペースで進んでいきます。

 

アポロ1号の事故から2年半後の1969年7月にアポロ11号が月面着陸。

さらに4か月後の1969年11月にはアポロ12号が再び月面着陸&船外活動。

そしてその5か月後の1970年4月にアポロ13号が3度目の月を目指して打ち上げ。

 

現在誰もが持ってるスマホ1台の方が、当時の宇宙船よりもはるかに高性能。当時の技術で「よく行けたな」とつくづく思います。

 

(見どころ)

宇宙でのミッション・シーン

ドラマメインの作品ですが、リアリティと緊迫感を持って描いてます。

 

(好きなところ)

月面にたたずむニールは何を想う?

別れ、喪失、死別。

心の隙間に「どうして?何故?どこにいるの?」っていう哀しみや痛みが吹きすさんでくる。

その答えを非日常に求めたくなるんだけど、その旅の行きつく先として、いつもはみんなが空を見あげて眺める場所、そして地球を外から俯瞰して達観に至れそうな場所って最適。

月に立つ。う~ん、得難い経験。

 

(宇宙行きたい?)

地球の周りを周回するだけ(外に出るだけ)の宇宙旅行に行きたいとはあまり思わない。そもそも外に出るだけなら、それは散歩で旅行じゃない。

月に降りれる(目的地、新天地に行ける)なら行ってみたいな。

 

★★★PICK UP LINES★★★

(シーン①)追いつけ、追い越せ

 

ディーク

Sputnik, Sputnik2, Vostok, Gagarin.

The Soviets have beaten us at every single major space accomplishment.  Our program couldn't compete.

So we've chosen to focus on a job so difficult, requiring so many technological developments, that the Russians are gonna have to strat from scratch.  As we all.

 

スプートニク、スプートニク2号、ボストーク、ガガーリン。

宇宙での大きな功績は毎回ソ連にしてやられてきた。

勝負にならなかった。

そこで高度な技術開発が求められる非常に困難なミッションに挑む。

ロシアにとってもこれかの計画。我々にもな。

 

 

(シーン②)IF・・・

CONTINGENCY STATEMENT IN EVENT OF MOON DISASTER

(月における不測の事態に備えた声明)

 

ボブ

Fate has ordained that the men who went to the Moon to explore in peace will stay on the Moon to rest in peace.

These brave men, Neil Armstrong and Edwin Aldrin, know there is no hope for their recovery.

They will be mourned by their families.

They will be mourned by Mother Earth that dared send two of her sons into the unknown.

For every human being who looks up at the Moon in the nights to come will know that there is some corner of another world that is forever mankind.

 

運命は月に挑んだ者たちが月で安らかに眠ることを選んだ。

勇敢なるアームストロングとオルドリンは帰還の望みがない事を知っている。彼らの家族、そして2人を未知なる世界へと送り出した母なる地球も嘆き悼むことだろう。夜空の月を見上げる全ての人々は、別世界の一角に我ら不滅の人類の領土があることを知るだろう。

 

 

※2番目に月に降りたオルドリンのファーストネームは本来はエドウィン(エド)でしたが、子供の頃から通称のバズでずっと通してきており、後に公的にもバズに改名しています。