2001年 宇宙の旅 S

(2001: A SPACE ODYSSEY1968

監督&製作&脚本  
スタンリー・キューブリック  
キャスト  
キア・デュリア デヴィッド・ボーマン(ディスカバリー船長)
ゲイリー・ロックウッド フランク・プール(副船長)
ウィリアム・シルベスター ヘイウッド・フロイド博士
ダグラス・レイン HAL9000(声)
ダニエル・リクター 月を見るもの(骨を持ったヒトザル)

猿人(ヒトザル)は動物の骨を道具・武器とし、獣を狩り、ライバルを殺す。

400万年の時が流れ、2001年、人類は木星を目指す

その影には人類の進化を促す謎の物体モノリスの存在があった。

 

最新型の人工知能HAL9000を搭載した宇宙船ディスカバリー号の木星探査ミッションを描いたSF作品

宇宙探査SFに、人類の起源や進化という壮大なテーマを絡めたスケールの大きな物語。

 

キューブリック監督の代表作の一つであり、SF映画の金字塔として今なおその輝きがあせる事のない名作。

数ある宇宙探査系SF作品の原型であり、そのストーリーや撮影技術はまさしくSF作のモノリスとなった作品。

 

脚本はキューブリックとSF作家の巨匠アーサー・C・クラークによるもの。

 

(スロ~でしず~か)

140分、やや長尺の映画。

400万年の時を描く壮大な作品なので長尺になるのも分かりますが、宇宙のシーンでは無重力を考慮してか、ゆっく~りとした動きで描いてます。音も人の呼吸音など最低限にしぼって静か。

(台詞のない長尺のシーンも多く、そこではクラッシック音楽をバシバシ流してます。)

ゆっくりなのも静かなのも、観客に実際の宇宙空間を感じてもらうため、リアリティを追求した表現だと思います。

 

(音楽)

台詞のない長尺シーンのBGMにクラッシック音楽を多用してます。

 

シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」の導入部(日の出)

荘厳感MAX!

この映画と言えばこの音楽、この音楽と言えばこの映画。

この音楽を付けるだけで何でも意味深で壮大にしてしまうインパクトとプレッシャーのある楽曲。

 

他に有名クラッシックでは「美しく青きドナウ」などが使われてます。

 

古典以外では現代の作曲家のリゲティ・ジェルジュの曲が使われています。

本人に許可を得ず勝手に使ったそうで、リゲティに印税が入ったのは1990年代に入ってからだとか。

その後もキューブリックは1980年「シャイニング」、1999年「アイズ ワイド シャット」でリゲティの曲を使ってます。

 

(科学考証)

半世紀以上経った今観ても、宇宙科学の進歩の方向性をきちっと見定めていて、表現や台詞に違和感がないっていうのは凄い。

専門家にアドバイスをもらい、科学的正確さにはこだわりぬいたそう。

 

(特殊効果)

流石に時代を感じる部分もありますが、CG技術がない中でフロントプロジェクション(背景合成の撮影法)等いろんな工夫をして撮ってます。

(ペンを張り付けた透明ガラスを動かく事でペンが浮いているように見せたり、ハムスターの回り車のように実際に回転するセットを作り宇宙船内の無重力を表現したり等々。)

 

特にスター・ゲイトの特殊効果は話題になりました。

スリット・スキャンという撮影技術を使って撮ってます。

正直かなり長いし、少しやりすぎかなと思いました。

 

(好きなところ)

●HAL

最初は人型ロボットにする案もあったようですが、音声と赤く光るカメラアイだけにして大正解だったと思います。

登場時からかなり危なそうなヤツ感を匂わせ、実際に人間に反旗を翻してからはひたすら怖い。あの赤い目がアップになるだけでめちゃくちゃホラーになってる。

 

HALは「AIの反乱」の象徴的な存在になり、以後、AIの反乱はSF作品王道のプロットになっていきます。

 

作中で詳しい説明はありませんが、HALには「乗組員と協力してミッションを行う」という指示と「乗組員には秘密でモノリス探査を行う」という指示が出されており、その矛盾した指示のせいでおかしくなったそう。

AIの反乱とは言え、AI自身の思考で人間排除の結論に至ったわけではなく、指示を与えていた人間側のミスによるものと言えます。

 

最期にデイジー・ベルを歌ってますが、これは1961年にIBMのコンピューターが世界で初めて音声合成により歌った曲がデイジー・ベルだったことにちなんで。

 

(解釈)

最終章、木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)がなかなかに難解。

 

キューブリックが内容の説明的な台詞やナレーションをことごとく削ったので、理解しにくくなっている部分があります。

でもそれにより映画の魅力が保たれている気がします。

説明過多は萎えるし野暮。

映画の力やその心は俳句や短歌に通ずるものがある気がします。

 

●400万年前のモノリス

異星人が地球の生物(ヒトザル)の進化を促すために送ってきた直方体の謎の石。各辺の比は1:4:9という自然数の二乗で、人工物であることを示唆しているそう。

 

●月で見つかったモノリス

木星に向かって強力な信号を発します。

これはヒトザルが月にやって来れるまで進化した事を知らせるセンサーとのこと。

 

●木星、そしてスター・ゲイトの先へ

キューブリックらしいモダンで洒落て不思議な感じの部屋に付きます。

これはデヴィッド船長の頭の中にある人間の暮らす場所のイメージを異星人が具現化したものだそう。

部屋の中でもう一人の自分と対峙するごとに歳をとっていくデヴィッド。

最後には赤ん坊(スター・チャイルド)となり、地球へと戻る。

スター・チャイルドは異星人によりさらに進化した人間の姿(表現?)。

それは肉体や時間や空間を超越した存在らしい。

 

これらの事はアーサー・C・クラークが本作公開後に発表した小説「2001年宇宙の旅」で説明されてたりします。

クラークはその後も続編「2010年宇宙の旅」「2061年宇宙の旅」「3001年終局への旅」を発表してます。

(2010年宇宙の旅は映画化されてます。)

 

観た人それぞれいろんな解釈があっていいと思いますが「なんか不思議な感じ~」くらに思って楽しめれば十分だと思います。

 

★★★PICK UP LINES★★★

(シーン①)HAL9000

 

The 9000 series is the most reliable computer ever made.

No 9000 computer has ever made a mistake or distorted infomation.

We are all, by any practical definition of the words foolproof and incapable of error.

 

9000シリーズはこれまでで最も信頼性のあるコンピューターです。ミスをおかしたり、誤った情報を伝えた9000シリーズはいません。

我々には絶対確実で完全無欠という定義が当てはまります。

 

 

(シーン②)感情

 

エイマー(インタビュアー)

Dr. Poole, what's it like living for most of the year in such close proximity with HAL?

(プール博士、ハルと一年近くも共に暮らしてどうですか?)

 

プール博士

It's like what you said earlier.

He's just like a sixth member of the crew.

You very quickly get adjusted to the idea that he talks, and think of him.. really just as another person.

(あなたが先ほど言ったように彼は6番目のクルーだ。なんといっても彼は話すことができるから、人間のように思っています。)

 

エイマー(インタビュアー)

In talking to the computer, one gets the sense thta he's capable of emotinal responses.

When I ask him about his abilities I sensed pride in his answer about his accuracy and perfecttion.

Do you belive that HAL has genuine emotions?

(彼と話していると感情があるように思えてしまいます。彼の能力について尋ねたとき、その正確て的確な答えには誇りさえも感じ取れました。ハルには本物の感情があると?)

 

プール博士

Well, he acts like ha has genuine emotions.

He's programmed that way to make it easier for us to talk to him.

As to whether or not he has feelings is something I don't think anyone can truthfully answer.

(あるかのように反応します。話しやすいように設計されていますし。でも実際にあるかどうか、誰にも真実はわかりません。)