デビルズ・ノット A

(DEVIL'S  KNOT)2013

監督 アトム・エゴヤン  
キャスト リース・ウィザスプーン パム 
  コリン・ファース ロン・ラックス(調査員)
  アレサンドラ・ニヴォラ テリー(パムの夫) 
  ジェームズ・ハムリック ダミアン・エコールズ(容疑者) 
  セス・メリウェザー ジェイソン・ボールドウィン(容疑者) 
  クリストファー・ヒギンズ ジェシー・ミスケリー(容疑者) 
  ケヴィン・デュランド バイヤーズ(被害少年クリスの父)
  デイン・デハーン クリス・モーガン(最初の容疑者)
  レックス・リン ギッチェル警部
  ロバート・ベイカー リッジ刑事(ガタイのいい刑事)
  ジャック・コグラン アーロン(証言した子供)
  ミレイユ・イーノス ヴィッキー(アーロンの母)
  ブルース・グリーンウッド バーネット判事
  コレット・ウォルフ ロンの女性部下
  エイミー・ライアン マギー(ロンの別れた妻) 
  ローリー・ベス・サイクス アニー(ダイナーの店員)
  イライアス・コティーズ ジェリー(ダミアンの保護観察官)
  ジェット・ユルゲンスマイヤー スティーヴィー(被害者 パムの息子)

1993年5月アメリカのアーカンソー州ウェスト・メンフィス。

3人の児童が行方不明となり、翌日遺体で発見され、程なくして地元の不良少年3人が逮捕、起訴されたウェスト・メンフィス3(スリー)事件を描いた作品。

(3は容疑者の不良少年3人の事を指します。)

 

しかし裁判が進んで行く中で証言や警察の取り調べなどに対して様々な疑問が生じていき・・・・

 

同名小説(邦題:悪魔の結び目)が原作で、被害少年の母親パムと、調査員ロンの視点から事件を見つめ直す作りになってます。

 

(見どころ)

●実際にあった恐ろしい事件と、その経過。

描かれる事件がフィクションなのか実話なのかで、観る側の興味の質が変わってくる。フィクションなら犯人探しを楽しむエンタメ色が強くなるけど、本作のような実話ベースの話では、「誰が何のために何を」という事実を知りたいという欲求に訴えかけてくる。

その事件が異質で異様で恐ろしいほどに。

 

●デビルズ・ノット(悪魔の集団)

逮捕起訴された3人は16、17、18歳。奇抜な恰好をしたり、ヘヴィメタ好きだったり、過激な発言をしたり、オカルトに興味を持っていたりと、言ってしまえばティーンの不良のテンプレートみたいなもんだったのですが、あまりに猟奇的な事件だったため悪魔崇拝の儀式と結び付けられ、また事件が敬虔なクリスチャンの多い田舎で起こったこともあり、悪目立ちする3人は容疑者へ、そして悪魔崇拝者へと仕立て上げられていきます。

でも本作で描かれる本当の悪魔とは何なのか。

主犯格とされた少年ダミアンが、物的証拠がないままに死刑判決を言い渡された際の、悲しさや怒りを帯びた目が印象的。

 「悪魔はお前らだろ」って。

ダミアン役のジェームズ・ハムリックは美形で、どこか謎めいた感じが良かったです。

(※knot(ノット) はロープの結び目の事ですが、集団、群れという意味もあります。)

 

(猟奇的な事件)

起った事件やその後の経過については、事実に即して描かれてるようです。

子供たちは裸で手足を縛られた状態で川底から発見され、それを見た警官が涙するシーンがあります。作中では遺体の詳細にまでは触れていませんが、3人の遺体には虐待された形跡があり、中には頭蓋骨骨折、睾丸を切り取られた遺体も。残忍な犯行です。

 

(冤罪事件として注目される)

事件から3年後、この事件や裁判を題材にした「パラダイス・ロスト」というドキュメンタリーが作られます。(その後2000、2011年に続編が作られる)それにより世間から冤罪事件として注目されるようになり、ダミアンたちを助けようという機運が高まり、ジョニー・デップなどの著名人も協力したり。

 

本作や「パラダイス・ロスト」は「冤罪事件」という視点で描いているので、これらを観る限りでは「こりゃ冤罪事件でしょ」と思えます。

冤罪が作られる過程を描いた作品としては秀逸だと思いますが、じゃあ実際のこの事件も冤罪なんだと、これらだけを見て判断してちゃダメなんだと思います。

 

(数々の疑問点)

以下、パムも言っている疑問点

・知的障害のあるジェシーの自白は事実と異なる事ばかり

・レストランに現われた血だけのアフリカ系の男は何者?

・その血を採取したが紛失してしまった警察の失態

・被害少年クリスの父親バイヤーズのナイフの血痕

・少年アーロンと母ヴィッキーの証言

(その後2人は証言を撤回。警察に脅されていたとのこと。)

・被害者スティーヴィーの継父テリーのDNA

(後に被害少年に付着していた体毛と一致)

・クリス・モーガン(初期容疑者)の自白

 

(仮に冤罪とするならば、真犯人は?)

作中でも描かれてますが、子供たちの父であるテリーやバイヤーズ、また捜査初期で容疑者となったクリス、血まみれでレストランに現れたアフリカ系の男などがあがってきますが、未だ真相はわかりません。

作中でも真犯人を断定してはいません。

映画という観せ物としては「結局よくわからない」では、不完全燃焼でちょっとストレスを覚えますが、仕方ないか。

「実話ベースで結局犯人わかりません」は、2007年「ゾディアック」と似たパターン。

 

(その後)

1999年にダミアンは支援者の女性と獄中結婚。

2007年に行われたDNA鑑定で被害児童に付着していた体毛がダミアン達とは一致せず。2011年に3人は司法取引に応じて釈放されます。

(アルフォード・プリー(Alford Plea)という、起訴事実は認めないが、有罪である事は認めるという意味不明な司法取引。)

 

(アトム・エゴヤン監督)

カナダ人の監督さん。

翌2014年にも子供誘拐を題材にした作品「白い沈黙」を撮ってます。

 

★★★PICK UP LINES★★★

疑問の裁判

 

パム

I don't know anymore. (もう何もわからないの。)

 

ロン

Neither do I. But I know in my heart that Damien, Jason, and Jessie did not do this.

(私にも分からない。でも確かなことも。ダミアン、ジェイソン、ジェシーは無実だ。)