グリーンブック S

(GREEN BOOK) 2018

監督 ピーター・ファレリー  
キャスト  ヴィゴ・モーテンセン  トニー・リップ(ヴァレロンガ) 
  マハーシャラ・アリ ドクター(ドン)・シャーリー 
  リンダ・カーデリーニ ドロレス(トニーの妻) 
  ディメター・マリノフ  オレグ(チェロ)
  マイク・ハットン ジョージ(ベース)
  ドン・スターク J・ポデル(コパのオーナー) 
  ジョー・コルテス ジオ・ロスクード (帽子が大事な大物)
  ファン・ルイス

ボビー・ライデル(コパのシンガー)

(実在した歌手)

  ジョニー・ウィリアムズ

ポーリー(ホットドッグ大食いヤロー)

 

ニック・ヴァレロンガ

(トニーの実子)

オーギー

  ピーター・カブ

チャーリー(質屋のじいさん)

1962年アメリカ。

アフリカ系のピアニスト、ドクター・シャーリーの南部(ディープサウス)へのコンサートツアーに同行することになったイタリア系の運転手トニー・リップ

アフリカ系アメリカ人への差別が公然と行われていた時代、地域。

生まれも育ちもアイデンティティもまったく異なる2人。

旅が進むごとに、現実を知り、互いを知り、徐々に理解を深めていく。

 

実話に基づいたお話。

 

アカデミー作品賞、脚本賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)を受賞。

ヴィゴ・モーテンセンにも主演男優賞をあげたかったなー。

(主演男優賞は「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレックに。)

 

The Negro Motorist Green-Book)

黒人ドライバーのためのグリーンブック

当時、黒人は宿泊・飲食・給油等拒否されることも多々あり、快適に旅をおくれるようにと1930~60年代に出版された黒人のための旅行ガイドブック。

グリーンの名は創刊者のヴィクター・H・グリーンさんに由来。

グリーンさんも当然黒人です。

 

(じんわり温かさが沁みてくる)

差別を描いた作品ですが、残酷すぎたり、凄惨すぎるシーンがないので、誰でも安心して観れます。

おバカでやや過激なコメディ作で知られる兄弟監督のファレリー兄弟のお兄ちゃん、ピーター・ファレリーの単独監督作になります。ファレリー作品にしては毒っ気のないウォーミングなお話。

 

インテリで孤高の黒人シャーリーと、腕っぷしが強く粗野で、家族の繋がりが強いイタリア系のトニー。

対照的な2人がゆっくりとわかりあっていく過程がいいですねー。

 

トニーの汚い言葉遣いやイントネーションがクローズアップされてましたが、日本人の自分にはその辺は聴いてもわからないので残念。

 

Blu-rayに付いてた特典  ⑨⑪➉⑫⑥辺りがディープサウス
Blu-rayに付いてた特典  ⑨⑪➉⑫⑥辺りがディープサウス

(差別問題の根の深さ)

アカデミー賞を受賞するなど、批評家からも概ね高評価だった本作ですが、一部のアフリカ系の方から、白人が非白人を救うヒーロー的な描かれた方「白人の救世主(white savor)」の典型だという批判があるようです。

トニーは白人ですが、WASPではなく、作中でイタリア系であることを揶揄されたりしているので、典型的な白人の救世主とも少し違うかなと思いますし、「これは差別社会の典型表現だ」という見方しかできなくなっていること自体が、逆に差別に囚われているのではと思ったり。

根の深い問題なので、日本に住む日本人が軽々に意見できるものではないのかもしれませんが。

 

(トニー・リップと映画)

エンドクレジットでトニーのその後としてクラブ「コパカバーナ」の支配人になったと紹介されていました。

そのクラブでフランシス・フォード・コッポラらと知り合い、1972年「ゴッドファーザー」に端役で映画デビュー。その後も1990年「グッドフェローズ」、1997年「フェイク」などのギャング映画などに端役出演してます。

 

そしてトニーの息子ニック・ヴァレロンガも俳優、脚本家になります。

(「ゴッドファーザー」「グッドフェローズ」では親子出演してます。)

本作ではファレリー監督とともに脚本&製作に参加。

さらにオーギー役で出演もしてます。

 

(見どころ)

●主演2人の演技

特にヴィゴ・モーテンセンは「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンをはじめ、精悍な男のイメージが強かっただけに、新境地と俳優としての実力を見せてくれたと思います。

(好きなところ)

●雪道でパンク修理をサポートしてくれた警官

警官に悪いイメージをもたせてからの。

 

ドロレスがシャーリーに手紙のお礼を言うラストシーンの2人の笑顔

トニーもシャーリーもステキなキャラですが、トニーの奥さんがまたステキ。

あのラストシーンの温かな余韻最高。

 

 

 

みんな大好きケンタッキー!

私も大好きなケンタッキー・フライドチキンが作中で美味しそうに食べられていました。

カーネルおじさんがフライドチキン販売のフランチャイズ化を始めたのは1952年。本作1962年頃にはすでにアメリカ、カナダで400店舗以上になっていました。(ちなみに日本進出は1970年。)

 

作中でシャーリーが「皿やナイフは?」

トニーに「手で食え」と言われてました。

ケンタッキーも finger lickin(指(についた油)をなめちゃうくらいおいしい)と謳っておりますが、私も手で食べるのはイヤ。

いつも箸で食べてます。

 

★★★PICK UP LINES★★★

旅のおとも

 

ドロレス

Did you go to the A-A-A for the maps?

(地図は?)

 

トニー

Yes, no. 

I mean the record company gave me maps and the itinerary and this thing.

(ああ、レコード会社が地図と日程表と、あとこれもくれたよ。)

 

ドロレス

The Negro Motorist Green-Book?

(「黒人ドライバーのためのグリーンブック」?)


トニー

Yeah, it lists all places coloreds can stay down south.

Like you know, traveling while black.

(ああ、旅行する黒人が南部で泊まれる宿が載ってる。)

 

ドロレス

Traveling while black?(黒人が旅を?)

 

トニー

Yeah.  If you're black and you gotta teravel for some reason.

(まあ、連中だって旅行することもあるんだろ。)

 

ドロレス

They had a special book for that?
(そのための本?)

 

トニー

I guess.(そうらしい。)

 

 

※A-A-A

American Automobile Association(アメリカ自動車協会)の略。

ロードサービスや旅行情報の提供をしてます。

日本のJAFみたいな組織。

ちなみにJAFとは提携を結んでいるので、日本のJAF会員はアメリカでAAAのサービスを受けられるそうです。

 

※coloerd

有色人種を意味しますが、この当時の米では主に黒人の事を指すと思います

 

※negro

元は黒人を指す学術用語としても使われていましたが、現在では差別的な表現とされていると思います。

派生語である nigger は完全に差別用語。

 

※black

元は差別的な意味を含んだ言葉だったと思いますが、1960年代、black is beautiful という標語とともに黒人が自分たちを自認する言葉として使われて定着していった言葉。

 

※African American

現在、アメリカでの黒人の呼称として最も無難で適切とされる表現。