戦場にかける橋 S
(THE BRIDGE OF THE RIVER KWAI)1957
監督 | |
デヴィッド・リーン | |
キャスト | |
アレック・ギネス | ニコルソン大佐 |
ウィリアム・ホールデン | シアーズ中佐 |
早川 雪洲 | 斉藤大佐 |
ジャック・ホーキンス | ウォーデン少佐 |
ジェームズ・ドナルド | クリプトン軍医 |
ジェフリー・ホーン | ジョイス |
アンドレ・モレル | グリーン大佐 |
M.R.B. Chakrabandhu | ヤン(ウォーデンの現地協力者) |
ヘンリー 大川 | 兼松大尉 |
勝本 圭一郎 | 三浦中尉(建設の指揮官) |
第二次世界大戦中のタイ。
バンコクからビルマのラングーン(ヤンゴン)を結ぶ泰緬鉄道の完成を急がせる日本軍。
クウェー(クワイ)川への鉄橋建設の指揮を執る斉藤大佐は、英軍捕虜たちを作業に使役するが、英軍隊長ニコルソン大佐はルールを無視した斉藤の命令に毅然と反対する・・・・
捕虜を中心に戦争や侵略に関わる人達の顛末を描いた英・米合作の戦争ドラマ。
(デヴィッド・リーン監督 & アレック・ギネス)
英を代表する名匠と名優。
製作はハリウッドの大物プロデューサー、サム・スピーゲル。
アカデミー作品賞、監督賞、脚色賞、作曲賞そしてギネスが主演男優賞を 受賞しました。
ギネスは1946年「大いなる遺産」、1948年「オリヴァ・ツイスト」に続いてのリーン監督作3作目。
本作以降も1962年「アラビアのロレンス」、1965年「ドクトル・ジバゴ」といったリーン監督の大作に出演していきます。
リーン監督と製作サム・スピーゲルのタッグは、1962年「アラビアのロレンス」でも再びアカデミー作品賞、監督賞を受賞します。
シアーズ中佐役のウィリアム・ホールデンは50年代アメリカを代表するスター俳優。
斉藤大佐役の早川雪洲は10~20年代のハリウッドで活躍し、あの喜劇王チャップリンと並ぶ人気を誇った世界的スター俳優。
アジア人で初の世界的スターとなった俳優。
アメリカ生活が長い割には英語の発音はあまり上達しなかったそうで(サイレント映画なら関係ないしね)、本作での超カタカナ発音英語が、逆に日本人ぽくてリアリティがあったのかな。
(原作)
「猿の惑星」でも知られる仏の小説家ピエール・ブールの同名小説。
ブールは戦時中に自由フランス軍に加わり、ビルマなどで抗日レジスタンス運動を支援していたようで、その際の見聞や経験が生かされているのかもしれません。
(泰緬(タイメン)鉄道)
日本軍がタイ人やインドネシア人などのアジア人労働者や、英・蘭を中心とした連合国軍捕虜を使役して突貫工事で建設した鉄道。
劣悪、過酷な労働環境のため大量の死者が発生。
Death Railway(死の鉄道)とも呼ばれています。
(泰緬鉄道を題材にした作品には2013年「レイルウェイ 運命の旅路」があります。)
(クワイ河マーチ)
英軍捕虜たちが登場シーンで口笛を吹いていた本作のメインテーマ。
誰しも聞いた事のあるメロディー。
元は「ボギー大佐」という英軍の行進曲。
それを作曲家のマルコム・アーノルドが映画用に編曲。
アカデミー作曲賞を受賞しました。
映画の成功と共に世界中で知られる行進曲となり、日本でも運動会なんかで今でも使われているのかなあ。
(戦争の中の道化たち)
過酷で非道な扱いを受ける捕虜の物語だけを描いても戦争の怖さを伝える事はできると思います。
しかし本作は、悪玉(日本軍)が捕虜(敗者、弱者)を虐げるという単純な構図ではなく、戦時下において登場人物たちの立場や状況が変わっていく中で、各々が各々の考えで行動していきます。
●ニコルソン大佐(アレック・ギネス演)
規律や礼を重んじ、部下からの信頼も厚い軍人らしい軍人。
捕虜という苦しい立場に置かれながらも、軍の規律や尊厳を維持することを第一として行動する。
指導力・行動力にも優れる立派な人格者で、一見、強く正しく導く人間のような気もしてくるが・・・
●シアーズ中佐(ウィリアム・ホールデン演)
先に捕虜になっていた米兵。軍命より自分の命。楽しく生きたい。
アメリカンな感じ。
●軍医クリプトン(ジェームズ・ドナルド演)
軍と距離を置く医者。感覚的には一般人に近い。
●斉藤大佐(早川雪洲 演)
無能上官の象徴。ニコルソンに折れる。
軍医クリプトンが一番客観的に物事を見れている感じ。
主人公で一番まっとうそうなニコルソン大佐も橋の建設にこだわっていく辺りから段々と偏りを感じるキャラに。
そしてあのラスト。
(ああ無情な最期)
戦争の前では主義主張も、正しい正しくないも関係ない。
この間まで同じ捕虜だった者同士が対立し、同じ国の軍人も対立し、時々の立場で良いも悪いも転じていき、ただただ悲劇を生み出すだけ。
そんな戦争の持つ無情さをまざまざと見せつける秀逸なラストでした。
ニコルソン大佐は最後に「私はなんのために・・・」と言ってこと切れます。
この台詞は、登場人物みんなに共通する思いだったのでは。
そして、戦争に対する問いそのものなのではと思いました。
(見どころ)
●爆破作戦の緊迫感
ニコルソンと斉藤が、起爆スイッチを構えるジョイスが潜む岩陰に近づくいていくシーンはハラハラドキドキ。
●虚無感が襲うラスト
(好きなところ)
荷物運びの女の子たちがかわいかった。
(実際のクウェー川鉄橋)
実際にはメークローン川という川に架けられていましたが、本作がヒットしたことで「鉄橋=クウェー川」という認識が広まり、「ならいっそのこと、そっちによせちゃえ」となって、川の名前がクウェー・ヤイ川(大クウェー川)に変えられました。
米・英軍の作戦により、橋に対して爆撃作戦が何度か実際に行われましたが、完全破壊には至らず、爆撃の度にすぐに修理して使っていたそう。
映画ではスリランカの密林に橋を作りましたが、形は実物とは全然違うそうです。
現在では立派な鉄橋が架かっており、観光名所にもなっているそう。
本作では、橋の形以外にも、史実と異なる部分が非常に多くあります。
あくまでフィクション作であり、実際の出来事を描写した作品ではありませんが、優れた戦争映画であることに変わりはありません。
★★★PICK UP LINES★★★
(各々の矜持①)隊長、ニコルソン大佐
(オーブン(営倉)の中で)
It's a matter of principle.
If we give in now, there will be no end to it.
これは主義の問題だ。ここで引いたらきりがなくなる。
(橋の建設)
I know our men. You've got to keep them occupied.
If there weren't any work for them, we'd invent some.
So we're lucky. But it is gong to be a proper bridge.
Here again, I know the men.
It's essential that they should take pride in their job.
兵隊には目標がなければ。なければ我々が考える。
幸いにも、我らには橋がある。
いいか、兵には仕事に誇りを持たせることが大切だ。
(各々の矜持②)軍医、クリプトン
Are they both mad? Or am I going mad? Or is it the sun?
2人とも普通じゃない。それとも私がおかしくなったのか。
暑さのせいなのか。
(各々の矜持③)米兵、シアーズ
This is just a game this war.
You and that Colonel Nicholson are two of a kind.
Creay with courage! For what!?
How to die likea gentleman. How to die by the rules.
The only important thing is how to live like a human being!
こんな戦争は単なるゲームだ。
あんたもニコルソン大佐も一緒だな。勇気なんて言葉に酔いしれて。
それが何になる。
紳士らしく死ぬ?ルールに従って死ぬ?
大切なのは人間らしく生きるってことなのに!