スリー・ビルボード C

(Three Billboards outside Ebbing, Missouri)2017

監督 マーティン・マクドナー  
キャスト フランシス・マクドーナンド ミルドレッド・ヘイズ 
  ウディ・ハレルソン ビル・ウィロビー署長
  サム・ロックウェル ジェイソン・ディクソン巡査
  ルーカス・ヘッジズ ロビー(ミルドレッドの息子)
  ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ レッド・ウェルビー(広告屋)
  ピーター・ディンクレイジ ジェームズ(小さい男)
  ジョン・ホークス チャーリー(ミルドレッドの元夫)
  サマラ・ウィービング ペネローペ(チャーリーの彼女)
  アビー・コーニッシュ アン(署長の妻)
  アマンダ・ウォーレン デニ―ス(雑貨店員)
  サンディ・マーティン ディクソンのママ
  ケリー・コンドン パメラ(広告店の事務員女性)
  ジェリコ・イヴァネク セドリック(警官)
  キャスリン・ニュートン アンジェラ・ヘイズ(被害者)
  クラーク・ピーターズ 後任署長
  ダレル・ブリット・ギブソン ジェローム(看板製作作業者)

3つの広告看板

(three billboards)

 

1枚目

「レイプされて殺された」

2枚目

「逮捕はまだ?」

3枚目

「どうして?ウィルビー署長」

 

娘を殺され、犯人が捕まらないことに苛立つ母親ミルドレッド(フランシス・マクドーナンド)が、警察に抗議するために出した3つの広告看板。

この挑発的な広告看板が、ミズーリの田舎町に騒動の波紋を広げる。

 

(ジャンルは何?)

観る人によって印象が変わるであろう、捉えどころが難しい作品ですが、

クライム・サスペンス・ドラマの皮を被った、ヒューマン・ブラックコメディ・ドラマだと思います。

 

この作品をコメディ&ヒューマン・ドラマだと思えると、なかなか味わいのある作品になります。

犯人探しのサスペンスだと思うと、尻切れトンボ感の残る半端な作品になってしまいます。

 

批評家受けはとても良く、でも一般受けはイマイチというタイプの作品です

 

(ミズーリ州)

主人公含めて一筋縄ではいかないくせのある連中ばかりのミズーリの田舎町が舞台。

原題タイトルには outside Ebbing Missouri 「ミズーリ州エビングの外れ」とあり(エビングは架空の町)、さらにタイトルロゴにはミズーリ州の形がわざわざ描かれています。

 

ミズーリはアメリカ中西部に位置する州ですが、この作品では「人種差別」や「ホワイト・トラッシュ(低所得白人)」などアメリカ南部の田舎町の象徴のような感じで描かれてます。

 

(赦しのドラマ 主人公ミルドレッド と レイシスト警官ディクソン)

怒れるミルドレッド

ミルドレッドは娘を殺されて怒っています。もちろん犯人や、それを捕まえない警察も許せませんが、一番許せないのは自分自身。

事件前の口論で娘に罵声を浴びせて車を貸さなかったシーンや、元夫から責められるシーンからも彼女の自責の念が伺えます。

 

しかしウィルビー署長からの粋な計らいや、大火傷を負わせたディクソンからの赦しを得てやわらくなります。

 

怒れるディクソン

人種差別警官のディクソンは、キレやすく、気に喰わない奴は捕まえたり、いじめたり、殴ったり、メチャクチャな警官です。

 

そんなディクソンは、敬愛するウィルビー署長からの手紙、そして自分が大ケガをさせた相手からジュースをもらった(赦してもらった)事で大きく変わります。

 

赦しの連鎖

怒りや憎しみに囚われていた2人が、少し軽くなってドライブするラストシーンはじんわりと沁みてきます。

 

きっと2人は、誰も殺さずに帰ってくるんだと思います。

 

憎しみの連鎖の逆を描いたようなお話です。

 

(コメディ?)

シリアスな殺人事件を扱った話ですが、不良警官ディクソンは関係ない市民をボコボコにして2階から突き落とし、ミルドレッドは警察署に火炎瓶を投げつけるなど、やってる事がハチャメチャ。

広告看板に端を発した、おバカな奴らのドタバタ狂想曲という側面もあると思います。

 

(見どころ)

●主役ミドレッド役のフランシス・マクドーマンド

見事な演技。

メイクの力もあると思いますが、本当にあの田舎町でずっと暮らしてきたという説得力のある顔になってる。シワや表情がいい。

ゴールデングローブ主演女優賞を、そして1996年「ファーゴ」に次いで2度目のアカデミー主演女優賞受賞の快挙。

(マクドーマンドは、1996年「ファーゴ」でアカデミー賞、2011年トニー賞(舞台演劇の賞)、2015年エミー賞(TVドラマ)で、演技賞3冠の快挙を達成した女優さんです。)

 

●もう一人の主人公ディクソン役のサム・ロックウェル

火傷を負う前と後でまるで別人かと思うくらい表情や雰囲気が変わります。

ゴールデングローブ助演男優賞、アカデミー助演男優賞を受賞しました。

 

その他の脇役キャストもみんないい味出してます。

 

●まったく予測できない物語

途中で「んっ?これ、犯人探しが目的の映画じゃないな。」という事に気づくと、「んっ?じゃあ、何目的の話?」となり、ストーリー展開がまったく想像、予想できなくなります。

それが本作の美点であり、軽くストレスでもあり。

 

 

(好きなところ)

●ミルドレッドとディクソンの最後のドライブ

両者とも笑みがこぼれる、じんわりシーン。

 

★★★PICK UP LINES★★★

ラスト  2人ともなんか憑き物が落ちたような感じ

 

ミルドレッド

Are you sure about this?(本当にいいの?)

 

ディクソン

About killing this guy?  Not really.  You?

(そいつを殺すこと?  どうかな。 あんたは?)

 

ミルドレッド

Not really.   I guess we can decide along the way.

(どうかしらね。 道すがら決めればいいじゃない。)