グラン・トリノ S
(GRAN TORINO)2008
監督 | |
クリント・イーストウッド | |
キャスト | |
クリント・イーストウッド | ウォルター・コワルスキー |
アーニー・ハー | ス― (姉) |
ビー・バン |
タオ(弟) |
クリストファー・カーリー | 神父 |
ドゥア・ムーア | スパイダー(モン族チンピラのリーダー) |
ジョン・キャロル・リンチ | マーティン(イタリア系の床屋) |
ブライアン・ヘイリー | ミッチ(ウォルターの息子) |
ジェラルディン・ヒューズ | カレン(ミッチの妻) |
ドリーマ・ウォーカー | ミッチの娘 |
スコット・リーヴス | トレイ(スーのボーイフレンド) |
ブルック・シアー・タオ | スーの母 |
チー・タオ | スーの祖母 |
Choua Kue | ユア(タオに気がある少女) |
偏屈で周囲の人間に悪態ばかりつをつく爺さんウォルター・コワルスキー。
妻を亡くし、息子や孫たちからは嫌われ、隣家に住むアジア系住民たちを毛嫌いするウォルター。
しかし、ある出来事がきっかけで隣家のモン族の姉弟との交流が深まっていく。
モン族のチンピラどもとのトラブルに巻き込まれた姉弟を見たウォルターは・・・
(イーストウッド劇場)
制作&監督&主演イーストウッド。
頑なな爺さんと少年との交流を描いたヒューマンドラマの体ではありますが、本質はイーストウッドが仕掛けたエンタメ作。
ためて、ためて、ラストシーンに全てを爆発させて観客の心を一気に揺さぶる彼お得意の作りになってます。
「許されざる者」の別Ver.のような感じもします。
脚本のニック・シェンクは本作以降もイーストウッド作品の脚本を手掛けていくことになります。
(2018年「運び屋」、2021年「クライ・マッチョ」)
スーのボーイフレンド、トレイを演じていたスコット・リーヴスはイーストウッドの実子。若い頃のイーストウッドに似てます。
音楽を担当したカイル・イーストウッドも実子。(スコットとは異母兄弟)
カイルは他のイーストウッド作でも音楽を担当してます。
(グラン・トリノ)
フォード・トリノの内、1972~76年生産したものがグラン・トリノ。
(モン族)
劇中でもスーが語っていましたが、ラオス、タイ、中国の山岳地帯に暮らす部族。
ヴェトナム戦争の際にアメリカ(CIA)に協力しため、アメリカが撤退した後、ヴェトナム、ラオスの共産政権から迫害を受け、多くがタイへ政治亡命した中、一部がアメリカにも渡っています。
本作ではモン族の役は実際にモン族の俳優が演じてます。
衣装や文化、風習なども正確に描写しているそうです。
(現在の米に住む現役世代の日常的風景という訳ではないと思いますが。)
モン族以外にもいろんなルーツを持つキャラが登場します。
主人公のウォルターはポーランド系、イタリア系の床屋、アイルランド系の建築現場監督、アフリカ系のチンピラなど。
ウォルターの言葉や態度は、とにかく差別的。
でもそれはウォルター世代の人たちにとって日常的に使っていた軽口や皮肉であり、差別ではなく、多人種国家における市井の人々がうまくやっていくための実地言語だったんだろうなと。むしこコミュニケーションの緩衝材になっていたのではと思います。
ただ、今はそんな意図は考慮されず、表現内容そのものが問題視される世の中になりました。
ようは、どんな場面でも冗談の通じない世の中になったという事です。
(見どころ)
●ラスト
相手を仕留めたウォルターの起死回生の一手。
イーストウッドのファンとしては、悪党どもをさんざん銃で仕留めてきた彼が迎えるあのラストは鮮烈。
(好きなところ)
●ウォルターの指鉄砲
聞こえてくるんですよねー。
Do I feel lucky?
Go ahead. Make my day.
マカロニ・ウェスタン、「ダーティ・ハリー」シリーズ、「許されざる者」これまでのイーストウッドがあっての、この指鉄砲はカッケー。
●スー役のアーニー・ハー
可愛かったし、演技(イーストウッドとの掛け合い)も良かった。
それだけに、スーの悲劇には胸が痛みました。
●真摯な神父
偏屈ウォルターが姉弟以外で距離を縮めていった相手。
本作の良心キャラをクリストファー・カーリーが好演してました。
★★★PICK UP LINES★★★
(シーン①)ランクルに乗る息子と息子の妻
ウォルター
Kill you to buy American? Jesus.
(アメリカの車を買ったらダメなのか?まったく。)
ミッチ
Did you see the way he looked at the truck?
It's always rice-burner this, Jap-burner that, you know?
Even at Mom's funeral, he can't let it go.
(さっきのオヤジの顔をみたか?ジャップの車になんかに乗りやがってって感じだ。おふくろの葬式だってのに。)
カレン
He didn't say anything.(何も言ってなかったじゃない。)
ミッチ
He didn't need to.(そんな顔をしてたんだよ。)
カレン
What do you expect?
The man worked at Ford all those years.
(仕方ないでしょ。ずっとフォードで働いてきた人なのよ。)
※rice-burner は「日本車」に対する侮蔑的表現です。
(シーン②)男の会話 タオ版
Excuse me, sir. I need a hair cut, if you ain't too busy.
You old Italian son-of-a bitch prick barber.
Boy, does my ass hurt from all the guys at my construction job.
すいません、よければ散髪をお願いしたいんですが、
このクソったれイタ公床屋ヤロー。
建築現場の男どもせいでケツまでボロボロだぜ。