明日、君がいない  B

(2:37)2006

監督 ムラーリ・K・タルリ  
キャスト テリーサ・パーマー メロディ(妹) 
  フランク・スウィート マーカス(兄)
  サム・ハリス ルーク(ジョック)
  マルニ・スパイレイン サラ(ルークの彼女)
  ジョエル・マッケンジー ショーン(ゲイ)
  スティーヴン スティーヴン(排尿障害)
  クレメンティーヌ・メラー ケリー

様々な問題、不安、ストレス、苦悩を抱え、家庭にも学校にも安らぎを見い出せない6人の高校生。 そしてPM2:37。

一人の学生が自ら命を絶った。

 

一人の高校生が自殺に至ったその一日を描いたオーストラリア映画。

 

若者の孤独・苦悩や自殺を描いた非常に重たいお話。

気軽に見れるような映画ではないです。

 

監督&脚本のムラーリ・K・タルリがこの作品に取り掛かったのは20歳の頃。

とても20歳の若者が撮ったとは思えないような重たく、示唆的な内容。

エンドクレジットに「親友に捧げる」とありますが、実際に友人を自殺で失い、また自身も自殺未遂を経験したタルリ監督が「人の抱える孤独」という目に見えないものを、見事に浮かび上がらせた作品。

むしろ多感な若者だからこそ気づき、描けた作品なのかも。

 

(スタイル)

監督&脚本のタルリ自身が認めているようにガス・ヴァン・サント監督の2003年「エレファント」の影響をもろに受けた撮影スタイル

舞台はほぼ高校の構内。

メイン6人の高校生それぞれにスポットを当て(それぞれに主観パートがあり、カメラがずっと追いかける撮影スタイル)、さらにそれぞれにドキュメンタリー風のインタビューパートがあります。

 

(「自殺するのは誰だ?」サスペンス?)

映画冒頭で誰かが自殺した事がわかります。

時はその日の朝に巻き戻り、6人の高校生が紹介されます。

 

ここから視聴者は、無意識的に6人の高校生への不幸度ランキング付けへと誘導されます。

誰もが重たい悩みや問題を抱えていますが、中でもメロディの抱える問題はかなりヘビーでシリアス。自殺したのはメロディか!?みたいに、「犯人探し」ならぬ「自殺者探し」のサスペンスへとリードされていきます。

 

(心揺さぶられる結末)

自殺したのはメイン6人の中の誰かではなく、作中で時折り登場していた気の良さそうな女生徒。「やられた」という感じです。

作中では名前も分からず、最後の最後でようやくケリーという名前が紹介されます。 

 

如何にも自殺原因となりそうな問題を抱えるメイン6人と異なり、ケリーにはこれというハッキリとした自殺の原因は描かれていません。

他者と深く関われていない孤独なのか、その事にも気づいてもらえない孤独なのか。

(密かにマーカスに惹かれていたケリー。マーカスの書いた作文の内容を気にしていました。作文の詳細はわかりませんが、物議を醸すようなセンセーショナルなラブストリーのようで、ケリーに尋ねられたマーカスが、自身の実体験に基づくものであると認めるシーンがあります。

生前のケリーが最後に目にしたのは、妹メロディを責め立てるマーカスの姿。その風景がケリーに何かを想起させ、自殺を決意させる最後のきっかけになったのかもしれません。)

 

(この作品のメッセージ)

監督としては決して推理ゲームをしたかったわけではないと思います。

「人の抱える問題や闇を他者がうかがい知る事なんて容易じゃない」

「ある人にとっては他愛のない事でも、ある人にとってはすごく辛い事もある。人を苦しめるものは人によって違う」という事を伝えたかったんだと思います。

それをただ観せるだけでなく「ほら、気付かなかったでしょ」と観客を巻き込んで実感させる仕掛けを作った脚本が見事。

 

「明日、君がいない」という邦題は、「もしかしたら明日、あなたにとっての君(誰か)が突然自ら命を絶つかもしれませんよ。」と突き付けてくるようで、力のあるいいタイトルだなと思います。

 

(スクール・カースト)

本作の主題ではありませんが、欧米でのスクール・カーストの典型が描かれてます。

ジョック(体育会系の人気者男子)やクイーン・ビー(チアリーダーのトップ)を頂点に、サイドッキクスやプリーザーなどの勝ち組(1軍)と、差別されたり、いじめられたりするナード(負け組)との格差など、どの国でも学校というのは全員が全員居心地のいい場所ではないようです。

 

いいのか、わるいのか、ケリーにはどの役割も当てられていなかったのかな。

 

★★★PICK UP LINES★★★

誰にでも・・・・

 

ルーク

話せないことってあるんだよ。どうしても。

オレは何があっても言わない。

 

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公開年  
2006年  
ランク  
 
年代  
   
舞台