病気の母の世話をしながら暮らす30代女性ナンシー。

30年前に行方不明になった少女の現在の姿を予測した顔写真を見たナンシーは、自分とよく似ている事に気づく。

「自分があなた達の娘かもしれない。」

少女の両親に名乗り出るが･･･

 

希薄な人間関係の中で孤独を抱え、人の気を引くため虚言壁のきらいがあるナンシーと、幼い娘を失った喪失感を抱える老夫婦が互いの心の隙間を埋めることができるのか？

人間の心の機微を描いたヒューマン･ドラマ

 

（心理描写ドラマ）

DVDのパッケージなどでは、サイコ・スリラー的な煽り文句で、パッケージ写真のナンシーもサイコパス感を漂わせていました。

「娘になりすましたナンシーが家を乗っ取っていく」ような展開になるのかと思って観ていましたが、全然違いました。

サイコ・スリラー作ではまったくないです。

孤独をきらい、他者との繋がりを求める人の心を描いたドラマ作です。

 

ナンシーの虚言には確かに病的なところもあります。

しかし彼女は他者への共感力のないサイコパスではありません。

体の不自由な母親の体をさすってあげたり、ケガ人に対して臆せず応急手当を行ったり。そして何より、リンチ夫妻からの期待に耐えられなくなる、そんな人間らしい心を持っています。

 

「北朝鮮に旅行に行った」等々あからさまに嘘くさいナンシーの発言も、リンチ夫妻との親子関係の真偽も、何が本当で何が嘘か、作中でははっきりと答えを明示することはありません。

そもそも親子関係については作中でも行っていた通り、DNA鑑定をすればすぐに判ってしまう事。この作品においてナンシーの発言の真偽はあまり重要でないという事でしょう。

 

（監督クリスティーナ・チョー）

韓国系の女性監督で、本作が長編監督デビュー作。

北朝鮮での隠し撮りし作品など、いろんなドキュメンタリーを撮ってきたようです。（それがナンシーの北朝鮮発言の元ネタになっているようです。）

 

初めはスタンダード比で撮られてますが、途中（ナンシーが家を出てリンチ夫妻邸を目指すところ）からワイドに変わってます。

 

（見どころ）

●ナンシー役のアンドレア・ライズボロー

美人の女優さんですが、本作ではノーメイクなのか、ノーメイク風の老けメイクなのか、鬱屈さがにじみ出る表情で好演しています。

 

●レオ・リンチ役のスティーヴ・ブシェーミ

アクの強いキワモノキャラのイメージが強かったですが、歳もとり、こんなまっとうなキャラもしっかり演じられるんだなーと思いました。