ナイチンゲール 

(THE NIGHTINGALE)2019

監督  
ジェニファー・ケント  
キャスト  
アイスリング・フランシオン クレア
サム・クラフリン ホーキンス中尉
バイカル・ガナンバル ビリー (原住民 クレアのガイド)
デイモン・ヘリマン  ルース軍曹
ハリー・グリーンウッド ジャゴ
チャーリー・ショットウェル エディ(ホーキンス隊の少年)
チャーリー・ジャンピジンパ・ブラウン チャーリー(原住民 ホーキンス隊ガイド)
マグノリア・メイムル ロワンナ(捕まった女性原住民)
マイケル・シーズビー エイデン(クレアの夫)
ユエン・レスリー グッドウィン大尉
ルーク・キャロル アーチ―(クレア友人)
エロイーズ・ワインストック ルディ(クレア友人 アーチーの妻)

19世紀前半。

オーストラリアのタスマニア島。

駐留する英軍の世話係をしていた流刑民のクレアは英軍将校のホーキンスに凌辱され、家族の命まで奪われる。

原住民のビリーをガイドとして雇い、復讐のためホーキンスを追ってタスマニアの密林を行く。

白人によるタスマニアン・アボリジニへの熾烈な差別や暴力がはびこり、憎しみと恐怖と哀しみが渦巻く森を・・・

 

1820~30年代、タスマニア島原住民のアボリジニと、入植者であるイギリス人との間に起こった争いブラック・ウォーを背景にした豪映画。

 

DVDパッケージや公式HPでは「暴力を受けた女性主人公によるリベンジ・スリラー」を売りにしてましたが、リベンジでもスリラーでもないです。

尊厳を奪われ続けた者たちが苦しみもがきながら進んでいくロードムービーです。

 

元祖看護師のナイチンゲールさんはまったく関係ありません。

西洋のウグイスとも呼ばれるサヨナキドリの英名がナイチンゲール。

慰労の歌を唄う主人公クレアの事を指してます。 

 

(かなりキツイ暴力描写)

夫の目の前で欲望丸出しの兵士たちに凌辱される妻。

さらに夫と赤ん坊が目の前で殺される。

理不尽な暴力に晒され続ける原住民たち。キツイ・・・キツすぎる・・・

 

ホーキンス中尉や部下のルース軍曹のケダモノっぷりが半端なくエグく、観る者の精神に大きな負荷がかかります。

シドニーの映画祭では途中退席者が続出したそうですが、それも頷けます。

(豪州白人が自分たちの黒歴史を直視出来なかったという面もあったかもしれません。)

生々しい暴力を見せつけられて「一体この作品は何を描きたいんだ??」とと思いましたが、後半までがんばって観ると、段々と作品の本質や描きたいものが見えてきて、容赦ない暴力描写の必要性も理解はできます。

140分とやや長尺の映画ですが、精神的に負荷のかかる重苦しい雰囲気が最後までのしかかって余計に長く感じてしんどい。

とにかく頑張らないと最後まで観れない作品です。

 

いろんな映画で女性が暴力を受けるシーンはありますが、総じて女性監督が描く方が、より生々しく男のケダモノ感が表現され、男性嫌悪に溢れたシーンになっている気がします。

 

(見どころ)

●クレアとビリーの交流

互いに尊厳を奪われ悔しい思いをしてきた2人の間に人種を超えて芽生えていく絆が本作唯一の救い。

 

●クレアの選択

赤ん坊を殺したジャゴを銃で撃ち、ナイフでメッタ刺しにし、銃床で顔面を崩壊させて復讐を果たしますが、その後、暴力での復讐を放棄します。

それでも自らホーキンスの前に立ち、ありったけの感情を暴力ではなく態度や言葉に込めて非難したクレアの行動はスゴイ。

なかなかそんな強さや勇気を持てない。

 

(アスペクト比)

何か意図があっての事だと思いますがスタンダードサイズで撮られてます。

左右に背景・風景の広がりがないので、作り手側が見せたいと思うものに、観る者の目をフォーカスさせる効果があるようにも感じました。

目を背けたくなるようなことも逃げずに直視してって事なのかなあ。

 

(オーストラリアの歴史的背景)

 ●流刑地、白豪主義

イギリスが資源や流刑地の確保を目的として入植、開拓させていました。

後に金鉱が見つかりゴールド・ラッシュが起こると、世界中から人々が押し寄せ、その中で白豪主義(白人優越)が強まっていき、原住民への迫害や差別政策が行われていきます。

●ブラック・ウォー(1828~1832年)

タスマニア島でも入植により家畜が広まり、狩場、獲物を失った原住民が入植者の食糧を奪ったり、家畜を殺して家を燃やしたり。

入植者も原住民の子供、女性を誘拐して暴行したり虐殺したり。

報復の繰り返しは激化し、またヨーロッパから持ち込まれた感染病の流行もあり最終的にタスマニアのアボリジニは絶滅したとされています。

 

★★★PICK UP LINES★★★

鬼畜外道フランクリン

 

エイダン

She's paid her dues. And so have I.

(彼女もオレも務めは果たしたはずだ。)

 

ホーキンス

Is that right?(そうかな?)

 

エイダン

She's my wife.(彼女はオレの妻だ。)

 

ホーキンス

And she's my property. So I'll do what I wabt with her.

(だが俺の所有物だ。オレの好きなようにする。)