沈黙 -サイレンス- A
(Silence)2016
監督 | マーティン・スコセッシ | |
キャスト | アンドリュー・ガーフィールド | セバスチャン・ロドリゴ神父 |
アダム・ドライバー | フランシス・ガルペ神父 | |
窪塚 洋介 | キチジロー | |
イッセー 尾形 | 井上筑後守(奉行) | |
浅野 忠信 | 通辞(通訳係の役人) | |
笈田 ヨシ | イチゾウ(じいさま トモギ村の長老) | |
塚本 晋也 |
モキチ(トモギ村の信徒) |
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小松 菜奈 | モニカ(捕まった信徒) | |
加瀬 亮 | ジュアン(捕まった信徒) | |
菅田 俊 | こわもての役人(井上の部下) | |
SABU | 井上の隣でロドリゴを尋問した役人 | |
AKIRA | モニカやジュアンに踏み絵を迫る役人 | |
青木 崇高 | 牢屋番(セバスチャンに十徳(服)を渡す) | |
渡辺 哲 | 牢屋番(雨の中キリシタンを働かせる男) | |
中村 嘉葎雄 | 老僧 | |
片桐 はいり | ガルペ神父に告解するトモギ村の女 | |
リーアム・ニーソン | フェレイラ神父(沢野忠庵) | |
キーラン・ハインズ | ヴァリニャーノ神父 |
キリスト教が禁教とされ、キリシタンが厳しく弾圧迫害されていた江戸時代初期。
ポルトガルから長崎に密航したイエズス会宣教師を描いた作品。
原作は1966年の遠藤周作の同名小説。
作中ではロドリゴ神父とガルペ神父が長崎に来たのは1640年となってます。
数年前に島原の乱があったばかりで、キリシタンへの弾圧が激しかった時代でしょう。
来日した彼らが、なかなかに凄まじい弾圧、拷問で苦しむ日本のキリシタン(信者)たちを目の当たりにして、自らの信仰を問い治すという重たーいテーマの作品。
スコセッシ監督がかねてより映画化を切望していた力作で上映時間も2時間30分越えと長尺。重苦しさも終始つきまとってきますが、画面の質が非常に高く、主演アンドリュー・ガーフィールドの熱演もあり、作品に引き込まれて、まったく飽きずに最後まで鑑賞できました。
熱湯責め、火責め、波責め、斬首等々、拷問シーンが結構ハードでキツイので、その辺で観る人を選ぶかもしれません。
「沈黙」というタイトルに合わせたのか、作中BGMがほとんどないです。エンドロールにも音楽がなかったのには驚きました。
(虫の鳴き声的な音はありましたが。)
内容が内容なので、玄人向けの作品であることは否めませんが、日本が舞台で(撮影は台湾でしてますが)、日本人俳優も多数出演してるので、その辺でも楽しめるかも。
(宗教映画というわけでないと思いますが・・・)
カトリック世界からは原作含め評価が割れてるようです。
(敬虔なカトリックの方にとっては、当時の日本の歴史的背景等も踏まえて一歩引いた所から観る事ができないと嫌悪感溢れる作品になってしまうかもしれません。)
(実在の人物)
フィクション作ですが、実在した人物も登場してます。
リーアム・ニーソン演じるフェレイラ神父は日本におけるイエズス会の中心的人物でしたが、1633年過酷な拷問「穴吊り」により棄教した「転びバテレン」。その後は沢野忠庵と名乗り、キリスト教を批判する「顕疑録」を記したり、キリシタンの取り締まりに協力してます。
主人公ロドリゴ神父のモデルとなったのはイタリア出身のイエズス会宣教師ジュゼッペ・キアラ。捕縛後、江戸に移送され、禁教政策の中心人物だった井上政重の下、フェレイラも立ち会い取り調べを受け、拷問の末に棄教。
岡本三右衛門という日本名を与えられ、フェレイラ同様キリシタン取り締まりに協力。
筑後守(奉行)の井上政重も実在の人物。
宗門改役(シュウモンアラタメヤク)としてキリシタン禁教政策の中心人物でしたが、自身も元キリシタンだったと言われており、原作小説ではそのように描かれてます。
(見どころ)
●主人公ロドリゴ神父の苦しみ
信仰厚き神父が、苦しみ、痛めつけられ、揺らぎ、そして・・・
アンドリュー・ガーフィールドの熱演が見事。
アカデミー賞級の演技だったと思うのですが、大人の事情的忖度で、この手のテーマの作品が賞レースの舞台に立つことはないようです。
●キチジロー
窪塚洋介が演じる弱くて自分勝手な人間。
彼をどう捉えるのか、価値観が問われるような気がします。
心が弱くて弱くて、自分勝手で見ていてイライラする人もいるかもしれません。でも自分も含め世の中のほとんどの人は、神父たちでもなく、じいさまやモキチでもなく、キチジローだと思います。
そんな弱き人間も許され、救いがもたらされるのか。
「信仰とは何か?」信心浅き私にはわかりません。
一番共感できるのは奉行所の役人なのかもしれません。
「形だけでも踏みゃーいーじゃん、ただの絵でしょうよ、それで丸く収まるんだからよー。」って。
(好きなところ)
●井上奉行役のイッセー尾形
一見まぬけそうな笑みをたたえた好々爺のようで、その実いろいろ考えてるしたたかなキレ者を好演。
カタコト日本語を話す中国系俳優ではなく、しっかりと日本人俳優を起用してくれたのはベリーグッド!
江戸時代の風景や人々や言葉使い等にも違和感は感じなかったです。
(ちなみに撮影は台湾で行われてます。)
★★★PICK UP LINES★★★
主の沈黙
I feel so tempted. I feel so tempted to despair. I'm afraid.
The weight of your silence is terrible.
I pray, but I'm lost. Or am I just praying to nothing? Nothing. Because you are not there?
私は惑わされています。絶望へと誘われるのです。私は恐ろしい。
あなたの沈黙が恐ろしい。祈れども迷うのです。
何に祈っているのか? 何に? あなたはいないのですか?