さよなら、アドルフ C
(LORE)2012
監督 | |
ケイト・ショートランド | |
キャスト | |
サスキア・ローゼンダール | ローレ(長女) |
カイ・マリーナ | トーマス(ユダヤ人の男) |
ネレ・トゥレープス | リーゼル(次女) |
アンドレ・フリート | ギュンター(双子) |
ミカ・ザイデル | ユルゲン(双子) |
ウルシーナ・ラルディ | 母 |
ハンス・ヨッヘン・ヴァーグナー | 父 |
エヴァ・マリア・ハーゲン | 祖母 |
フリーデリケ・フレリッヒス | ナチシンパのお婆ちゃん |
1945年、第二次世界大戦、ドイツ敗北。
ナチス将校だった父、さらには母までもその責任を問われる身となり、残された乳児を含む5人の姉弟たちは祖母の家を目指してドイツを縦断する過酷な旅に出る。
敗戦直後、人々の暮らしもメンタルも混乱・混沌の真っただ中、ナチ思想に染まっていた長女ローレが目にする現実とは・・・
少女ローレを通して戦争の現実、敗戦国の悲惨さを描いた戦争映画の一つ。
戦中、戦後を生き延びたユダヤ人や、ナチ戦犯のその後を描いた作品は多々ありますが、ナチスの家族を描いた作品はないかも。
(敗戦と少女)
●悲惨な敗戦国の状況
日本の「火垂るの墓」とまったく同時代の物語。
物資、食糧に乏しく、生き抜くことで精一杯な時代。
割を食うのは女性や子供。敗戦国の悲惨さは日本と同じ。
●価値観の崩壊
家、街、食糧、物資などが壊れ果てただけでなく、人々の価値観やメンタルも打ち砕かれた敗戦国のカオス。
ユダヤ人を迫害したナチスは、今や家を追われ、罪を問われ、捕まる事に恐怖する日々。立場がまったく逆転してしまった皮肉。
序盤の家族での逃避行のシーンも「サウンド・オブ・ミュージック」と逆パターンな感じ。サウンド・オブ・ミュージックは希望を感じさせる逃避行でのラストでしたが、本作では不安や恐怖しかない逃避行で物語がスタート。
国が壊れた悲惨な状況、そしてナチス(自分の父)がしてきた残虐行為を知って価値観を揺さぶられる少女ローレを描く事で戦争の罪深さを描いてます
●多感なお歳頃の少女の複雑な心情
戦争の悲惨さにプラスして、ローラの複雑な心情も描いてます。
特に性的なことへの目覚めや好奇心にかなりスポットを当てていて、謎のイケメンユダヤ人青年トーマスの登場がその辺りを刺激してます。
そのせいで、「戦争モノ」なのか「少女のドラマ」なのか作品自体の焦点がブレてしまっている感じがします。
(上手く融合させたかったのかもしれないが、できてない。)
「少女(ローレ)の変化」により重点を置いた作りになっている気がするので、原題の「LORE」に対して、邦題の「さよなら、アドルフ」はミスリード感あり。
●心の平穏は訪れず
ローレは目的地である祖母の家に辿り着きますが、そこで心の安らぎは得られませんでした。
大人たちの建前や欺瞞が脆くも崩れ去り、生き抜く事すらままならない世界で剥き出しになって襲ってくる人間の本音や醜さの中でのサバイバルを通して、とてもとても素直な少女のままではいられなくなってしまったローラ。
可愛らしい陶器の動物たちを壊して、これからどんな人生を歩むんだろう。
逞しく生き抜いていくのかなー。
(監督ケイト・ショートランド)
ケイト・ショートランドはオーストラリア人。
本作はオーストラリアとドイツの合作。
オーストリアではなく、オーストラリア。
豪州人である彼女が何故、ナチスを扱った独語の作品を撮ったのかが謎。
経歴を調べてみたけどわからなかった。
顔のアップも多かったですが、歩いている時の足元のアップを多用するのが印象的でした。
土まみれ、泥まみれの靴や裸足から旅の過酷さは伝わってくる。
子役たちもほとんどが屋外ロケで大変そう。
★★★PICK UP LINES★★★
ヒトラーユーゲントの歌
ユーゲント(青少年)よ 前に進め 国中をどこまでも
ユーゲント(青少年)よ 前に進め 誰も家にとどまるな