ウインド・リバー C

(WIND RIVER)2017

監督 テイラー・シェリダン  
キャスト ジェレミー・レナー  コリー・ランバート(ハンター)
  エリザベス・オルセン ジェーン・バナー(FBI)
  グラハム・グリーン ベン・ショーヨー(部族警察長)
  ケルシー・アスビル・チャウ ナタリー・ハンソン(死んだ少女)
  ギル・バーミンンガム マーティン(ナタリーの父)
  ジョン・バーンサル マット(ナタリーの彼氏)
  ジュリア・ジョーンズ ウィルマ(コリーの元妻)
  テオ・ブリオネス ケイシー(コリーの息子)
  エイペザナクウェイト ダン(ウィルマの父)
  マーティン・センスマイヤー チップ(ナタリーの兄)
  ジェームズ・ジョーダン ピート(採掘場 警備員 クソヤロー)

ワイオミング州。

ウインド・リバー・インディアン保留地。

雪の中、裸足で息絶えていた少女の死の真相に迫るサスペンス。またネイティブ・アメリカン保留地の抱える問題を切り出した社会派サスペンス。

 

(監督)

監督&脚本のテイラー・シェリダンは2015年「ボーダーライン」などハードボルドなクライム・サスペンスが得意な脚本家で、本作で監督デビューしました。

テキサス生まれで、元々は俳優をしてました。特典インタビュー映像に登場したシェリダン自身もマッチョでイケイケオラオラ系タフガイでハードボイルドな感じです。

 

(サスペンス、社会派ドラマ、ハードボイルド)

普段注目されることのない「インディアン保留地」というアメリカの闇に切り込んだ作品になります。保留地の抱える闇に踏み込みながら真相に迫り、静かながら重みのある真摯なサスペンスが展開していきますが、最後に監督がハードボイルドを抑えきれなくなったのか、壮絶な銃撃戦へとなだれ込みます。

その緊迫感は半端なく、クライム映画のクライマックスとしては良いのかもしれないですが、本作はインディアン保留地の問題を扱った社会派ドラマ的な性格の強い仕上がりになっているので、警備員という職に就いて身元も割れている人たちが、訪ねてきた警官やFBIにいきなりぶっ放すという突飛な展開はリアリティに欠けて一気に興ざめしました。

最後にパニッシャーとなった主人公コリーがゲス男にガッチシ復讐してくれるものの、死んだ女の子が可哀想すぎて、すっきりとはしないお話でした。

 

(見どころ)

●アベンジャーズ!? 狙ってのキャスティング?

マーベルの「アベンジャーズ」シリーズが佳境を迎えつつある2017年公開の本作の主演がジェレミー・レナー(ホークアイ)と、エリザベス・オルセン(スカーレット・ウィッチ)。狙っているとしか思えないキャスティングにまんまとハマって観てしまいました。

ジェレミー・レナ-は登場シーンでスナイパーをしていて「うわ~、まんまじゃん!」と初っ端なから期待に応えてくれます。

オルセンに対しては「テレキネシス使えば、そんな奴ら瞬殺でしょうよ!」とつっこんだりしながら観てましたが、かなり重たいテーマの作品で、2人のシリアスな演技もあり、すぐにスーパーヒーローであることなど忘れて見入ってました。でもやっぱり終盤にレナーがホークアイばりの大活躍を見せてくれます。

 

●ここで生きるということ

腐る人、外の世界に希望を見い出そうとする人、そして主人公コリーのように諦観しながらも、覚悟を持ってこの地で出来ることをしていく人。

そのどれもが哀しい。

 

●雪山や雪原の風景

雄大な自然の風景のはずなんですが、ストーリーや音楽と相まって、圧迫感を感じ、山々に閉じ込められてる感が出てます。

 

(インディアン保留地 INDIAN RESERVATION

●インディアンという呼称

作中に映った道路の標識には「INDIAN RESERVATION」とありました。

アメリカでも「インディアン」という呼称は差別的なので「ネイティブ・アメリカン」という呼び方に変える動きはありますが、インディアン事務局(BIA:Bureau of Indian Affairs)など公な機関でも「インディアン」の呼称は現在も使われています。

「インディアン」という言葉が差別的かどうかは受け取る側次第なのが現状。「ネイティブ・アメリカン」は、アメリカ本土だけでなくハワイ諸島など、アメリカ全領土における先住民族を含んだ言葉で、個別の民族を指す呼称ではありません。なのでこれまでアメリカ本土で「インディアン」と呼ばれてきた人たちが「アメリカン・インディアン」という呼称を主張したり、当の先住民の方の中にも「インディアン」という呼称にアイデンティティを感じる人たちが少なからずいるようです。

 

●保留地

インディアン「居留地」という日本語表記も見ますが、「保留地」の方が元々の意味合いに近いです。RESERVATION には「留保」という意味があり「インディアンのためにとっておいた(リザーブした)場所」という意味合いになります

 

●いろいろ問題

本作では歴史的な背景についてはほとんど触れていませんでしたが、ざっくり言うと、19世紀に白人に居場所を追われたインディアンたちが強制移住させられた場所になります。不毛の原野に移住されたうえ、元々農耕民族ではない彼らに農業してろと言う無茶な政策のせいで多くのインディアンが犠牲になりました。ざっくりとではとても語れない歴史があります。

 

保留地はウインド・リバー以外にもたくさんあります(100カ所くらい)。へき地なので産業がなく失業率、貧困率が高い。でも保留地で生活すると年金がもらえる制度があるので仕事に就かずアルコールに溺れて腐る人がいたり、隔絶的な社会の中で未解決のまま終わる刑事事件も多いようです。

 

本作の最後に保留地に暮らす父親が顔に先住民族的なメイクを施しますが、「習う人もいないし意味もよくわらずテキトーにやった。」と言うシーンがあります。

儀式や狩猟をずっと弾圧され続けてきたので、民族の持つ文化的側面はとっくに絶えてしまっているのかもしれません。

じゃあ、保留地って一体・・・・・

 

★★★PICK UP LINES★★★

(シーン①)雪に残った足跡から

 

コリー

See this one. See how the toes turned out.

The front is much deeper than the back. That says she was running.

She ran until she dropped, here.

See the pool of blood where her face hit the snow.

Now it gets twenty below here at night.

So if you fill your lungs up with that cold air when you're running it could freeze em up. Your lungs fill up with blood, you start coughing it up. So wherever she came from. She ran all the way here.

Her lungs burst here.

She curled up in that tree line drowned up in her own blood.

(これを見てくれ。つま先の部分。前の方が後ろより深い。つまり走ってたって事だ。ここで転んでる。顔が当たった所の雪に血だまりがある。

ここらじゃ夜にはマイナス30度近くになる。走りながらそんな冷たい空気を吸い込むと肺が凍って血が溜まり吐血する。どこから来たにしろ、ここまで走ってきて肺が破裂。自分の血で窒息してあの木の前で倒れた。)

 

ジェーン

How far do you think someone can run barefoot out here?

(裸足で走れる距離はどれくらい?)

 

コリー

Oh, I don't know.

How to gauge someone's will to live, especially in these conditions. But I knew that girl. She was a fighter.

So no matter how far you think she ran I can guarantee you she ran farther.

(それはなんとも。人の生きようとする意志次第だ。特にこんな状況ではな。でもオレはあの子を知ってる。強い子だった。君が思っているよりもずっと走っているだろう。)

 

 

走った距離や、そうなるに至る話を知ると、悲しみが突き刺さってきます。

 

 

 

(シーン②)ウインド・リバーで生きるということ

 

チップ

You think this is who I wanted to be?

I get so mad.  I want to fight the whole world.

You got any idea what's that feel like.

(オレだってこんな自分はイヤさ。でも怒りがこみあげてきて世界中が敵に思える。こんな気持ちわかるか?)

 

コリー

I do.  I decided to fight the feeling instead.

Because I fear that the world would win.

(ああ。でもオレは感情の方と戦うと決めてる。世界と戦っても勝てないからな。)