アクトレス  ~女たちの舞台~ B

(CLOUDS OF SILS MARIA)2014

監督  
オリヴィエ・アサヤス  
キャスト  
ジュリエット・ビノシュ

マリア・エンダース(現ヘレナ役、かつてシグリッド役

クリステン・スチュワート ヴァレンティン(ヴァル マリアの秘書)
クロエ・グレース・モレッツ ジョアン・エリス
ラース・アイディンガー クラウス (演出家 マリアにヘレナ役をオファー)
ハンス・ツィッシュラー ヘンリク・ヴァルト(かつての共演俳優)
ジョニー・フリン クリストファー(ジョアンの彼(小説家))
アンゲラ・ヴィンクラー ローザ(亡くなった劇作家の妻)

若き日に主演し、女優としての飛躍のきっかけとなった舞台劇から20年。再演のオファーが舞い込むが、今回は主役ではなく、主役に翻弄される中年女の役。

 

若きヒロインと、相手役の中年女

ベテラン女優と、若い秘書

 

 

歳を重ねていく女性の心を描いた大人なドラマ。

 

仏・独・スイスの合作映画。主な舞台はスイス。言語は英語がメイン。

 

(かなり大人向け、玄人向けのドラマ作)

中年女の役を演じるベテラン女優をベテラン女優が演じるというメタ的構造の凝った脚本。

比喩的な演出や表現が多いので、その解釈は観た人次第。

 

①作中の舞台劇「マローヤのヘビ

若き主人公シグレッドと、彼女に魅力を感じながらも翻弄されていく中年女ヘレナの物語。

最後にシグレッドに捨てられたヘレナは自ら姿を消してしまう。

 

②本作の主役  ベテラン女優マリアと若き秘書ヴァレンティン

マリアは女優としての成功を掴んだ若き日の自分(シグレッド役)を忘れられず、シグレッドの相手役である中年女ヘレナ役のオファーを躊躇してイジイジ。

そんなマリアに、ヴァレンティンはキャリア(年齢)や需要に応じた仕事を勧めて面倒を見ようとし、マリアもそれに依存。

 

ヴァレンティンの方がだいぶクールで大人な印象。

 

過去の自分から脱っせないマリアと、それを諭そうするヴァレンティンとの溝は埋まることなく徐々に広がっていき・・・・・

 

でもマリアとヴァレンティンの相性が悪いわけではない。

ヴァレンティンも自分の感情に真っすぐなマリアに惹かれる部分も。

 

③ジュリエット・ビノシュ と クリステン・スチュワート

実際に演じるのもベテラン女優と、若手美人女優。

 

①のヘレナとシグレッド

②のマリアとヴァレンティン

③のジュリエットとクリステン

それぞれの立ち位置や関係性が相互リンクしているような三重構造。

必ずしも完全にリンクしている訳でもないですが。

 

マリアとヴァレンティンが台詞の読み合わせをするシーンは、台本の台詞なのか、2人の本音の会話なのか、なのかなのか、境目をあやふやにして錯覚させる演出が巧み。

 

(華麗ならざる加齢ドラマ それでも女は美しい!)

加齢や老いへの抵抗、不安、恐怖は何も女性に限らず男性にも、誰にもあるものだけど、それに最も向き合わされるであろう女優という人種にスポットを当てることで象徴的に描いてます。

 

邦題は、わからなくはないけど、いまいちしっくりこない。

 

●マローヤの蛇

スイスの景勝地シルス・マリアで見られる自然現象。

山間の谷に、雲海がうねるにように進んでいく幻想的な風景。

地名と主人公の名前がリンクしてます。

 

モクモクとあたりを覆い尽くしていく雲や霧は、迷いの中にいることの比喩的表現でしょうか。

歳を重ねた自分の立ち位置がわからないマリア。

臆することなく「いつまでもシグレッドでいたいの」なんて言い放つマリアは痛々しさすら感じます。

そんなマリアに相対し苛立ち濃霧の山道を車で進むヴァレンティン。

 

どっちが良い悪いじゃないし、勝ち負けでもない。

だって画面に映る雄大なスイスの山々の景色も、マローヤの蛇の幻想的な景色も美しい!

迷いの中にいても、いや、迷える姿そのものも美しい!

シグリッドもヘレナもマリアもヴァレンティンも、そしてそれを演じるジュリエットもクリステンも、みーんなビューティフォー!

と、言っている作品なかのかなと。個人的な解釈です。

 

(見どころ)

ジュリエット・ビノシュ(当時49歳)

クリステン・スチュワート(当時23歳)

クロエ・グレース・モレッツ(当時16歳)

共演するイメージのまったくなかった女優3人の共演

 

監督&脚本のオリヴィエ・アサヤスとジュリエット・ビノシュはフランス人。

クリステンとクロエはガチガチのアメリカ女優。

 

●特にクリステンの演技が秀逸

セザール賞(仏の映画賞。米でのアカデミー賞にあたる。)の助演女優賞を受賞しました。セザール賞受賞は米人女優で初!

トワイライト・シリーズ」のイメージが強く、アイドル女優的な印象も持ってましたが、巧い演技。

作中のマリアのように、クリステンにとっても機転となるような作品になったかもしれません。

アサヤス監督の次作「パーソナル・ショッパー」(2016)では主演を務めてます。

 

●ジュリエットはアカデミー賞さらに世界三大映画祭全てで女優賞を受賞している名女優

どんな気持ちでこの役を引き受けて演じてたのかなー。

ともすればピエロ的なキャラにも見えるマリアを演じることで、観客に「クリステンの演技が一番良かったなあ~」と思わせることを狙っているような感じもしました。

演じたマリアは最後に「時を超越」する俳優という特殊な人生を歩んでいることに気づいて歩みだそうとしている感じだったのかなー。

ジュリエットの今後も楽しみです。

 

●出番は少なめクロエちゃん

剝き出しの若さでマリアにバッサリと切りつける役。

 

★★★PICK UP LINES★★★

ベテラン俳優とマーベル

 

ヴァレンティン

She says that she's gonna take the "X-MEN" thing off IMDb.

(「X-MEN」の記事は削除するって。)

 

マリア

I did the one. I was enough.

Now, why am I playing Nemesis again?

(ネメシス役なんて一度で十分だわ。)

 

ヴァレンティン

Well, they have to do it now because everyone's blogging about it already.

(また出演するってネットで騒がれてる。)

 

マリア

Yeah, I'm sick of acting, hanging from wires in front of green screens.

(ワイヤーやブルーバックなんてもううんざりだわ。)

 

ヴァレンティン

I've outgrown it. Fans are gonna be devastated.

(期待してたのに。ファンにはかなりショックよね。)

 

メインカテゴリー  
ドラマ  
   
サブカテゴリー  
   
公開年  
2014年  
ランク  
B  
年代  
   
舞台  
スイス