あのこと  A

L'événement2021

監督  
オードレイ・ディヴァン  
キャスト  
アナマリア・ヴァルトロメイ アンヌ 
ルアナ・バイラミ エレーヌ(友人) 
ルイーズ・オリー・ディケーロ ブリジット(友人)
ケイシ―・モッテ・クライン ジャン(男友達)
サンドリーヌ・ボネール アンヌの母
シリル・メッツガー 消防士の男
ジュリアン・フリゾン マキシム(アンヌの遠恋彼氏)
ピオ・マルマイ 文学教授
ファブリツィオ・ロンジョーネ かかりつけの医者
ルイーズ・シュヴィヨット オリヴィア(アンヌ学友 切る)
アンナ・ムグラレス 闇医者

1960年代フランス

女子大生のアンヌ

裕福な家庭ではないが、進学して、成績優秀で教師を目指していたその矢先・・・

妊娠が発覚した。

 

当時のフランスでは中絶は違法

周囲の協力を得られず苦悩し、襲い来る不安と闘いながら自分の未来のため道を模索するアンヌ。

 

予期せぬ妊娠、それに対処しようとする女子大生を描いたフランス映画

 

(原作)

フランスの作家アニー・エルノーが自身の体験を書いた自伝的小説「事件」が原作。エルノーは自伝的小説しか書かない作家さん。

本作公開が影響したわけではないと思いますが、翌年(2022年)にノーベル文学賞を受賞しました。

エルノーは本作を鑑賞し「きわめて忠実かつ正確に演じられている」とコメントを寄せてます。

 

(映画×妊娠)

妊娠を題材にした映画は結構あります。

授かって嬉しい望まれた妊娠ならば何の問題もなく題材にならないので、望まれぬ妊娠が描かれるのが常で、本作もそうです。

 

実話ベースのお話で、劇的な展開やトリッキーな解決法が用意されることはなく、「中絶が違法で罰せられた時代に少女が妊娠すること」の過酷さ、理不尽さをひたすたら真摯にまざまざと描いてます。

 

妊娠が発覚した時にアンヌが呟いた「不公平だ」という言葉が、男である自分にズンと響いてきます。 女性の負うリスクは計り知れない。

 

当時、アンヌと同じような経験をした女性は世界中にたくさんいて、不幸にも自身の命も落としってしまった人もいたのでしょう。

 

(追い込まれるアンヌと観客)

画面がスタンダードサイズなのはカメラとアンヌを一体化させるためだそう

 

観客は映画が進む中で、アンヌとともにどんどん追い詰められていきます。

アンヌが編み物針を自分で挿入するシーンはもう見てられない。

痛みで歪むアンヌの顔がアップで映されます。

 

闇医者の処置を受ける時はアンヌ側からの視点となり、処置する医者は見えますがアンヌの表情は見えません。

でもそのシーンを観ている自分の顔が歪んでアンヌの表情になってました。

あのシーン、表情変えず真顔で観れる人いるのかな。

 

その他にも目を覆いたくなるようなシーンはあります。

観客もアンヌと一緒に追い込まれる事を求めてくる作品だと感じたので、がんばって目をそらさないようにしました。

 

「観て面白いか面白くないか」で判断するような作品ではないので評価が難しいですが、「観客にもアンヌの苦悩を共有させる」という点では、これ以上ないほど上手かったと思います。それも映画の持つ力だと思います。

そうした所が評価されてヴェネツィア国際映画祭での金獅子賞の受賞につながったんだと思います。

 

個人の自由や権利ついては特に意識が高いイメージのフランスにもそんな時代があり、でも今さらそんな時代を批判しても仕方ないので、自分の行為がもたらす結果について想像を働かせることが大事だなと思いました。

 

フランスの法律はその後もちろん変わっていますが、今も世界で同じようなことで苦しい思いをする女性はたくさんいるんだろうな。

 

(見どころ)

●主演アナマリア・ヴァルトロメイ

苦悩を抱えながらも闘う強い女性を熱演。

 

★★★PICK UP LINES★★★

アギレの直説法現在 なにそれ?

 

 アゴ アギス アギト アギムス アギティス アグント

 

仏語の動詞の活用のようですが、女学生たちが覚えるために上の言葉を呪文のように繰り返していたシーンを見て、「ありおりはべりいまそかり」が頭の中に浮かんできました。

「ラ行変格活用」という言葉は記憶に残っているけれど、それが何なのかはまったく覚えていない。意味すら忘れてしまっているのに、いまだ頭の中に残っていたことにちょっとビックリ。

 

タイトルの événement は仏語で「出来事、事件」。

英語でのタイトルは「happening」。

邦題の「あのこと」は、ちょっと俗っぽい表現ですが生々しさがあって、この作品には合うと思います。

 

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フランス語  
公開年  
2021年  
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